残業を減らせと言う労基署が邪魔?いや邪魔なのは“人を壊してまで回す社会”のほうだろ、という話

また出ました。
日本政治おなじみの、**「人が苦しいのは制度が厳しいせいだ」**という、問題の向きを180度間違えるやつです。
高市政権が掲げる「労働時間規制の緩和検討」をめぐって、自民党が、労働基準監督署による残業削減指導の運用を見直す提言をまとめたと報じられています。報道ベースでは、「業種や規模に関係なく一律に指導しているのはどうなんだ」という声があり、現行制度の範囲内で企業がもっと残業しやすくなるよう支援することまで盛り込まれているようです。
はい出ました、“長時間労働を減らすためのルール”を見て、「これじゃ長時間労働しにくいじゃないか」と言い出す本末転倒選手権・優勝候補です。 https://www.sankei.com/article/20260410-RIEOPCKZFRLFNJE77HRUIQOVAU/ 
https://www.asahi.com/articles/ASV490QZXV49ULFA002M.html
いや、こっちは「そうだよ?」としか言いようがないんですよ。
残業しにくくするための制度が、ちゃんと残業しにくくしてる
それの何が不満なんですか。
包丁に「切れ味があるから危ない」と言ってるんじゃないんです。
火災報知器に向かって「うるさいから外せ」と言ってるのに近い。
しかも火事は現在進行形です。


そもそも今の規制ですら、全然“甘くない”なんてことはない

日本の労働時間規制は、政治家や経済界の一部が言うような「ガチガチの社会主義監獄」ではありません。
労働基準法では法定労働時間は1日8時間・週40時間。ただし36協定を結べば時間外労働は可能で、上限は原則月45時間・年360時間です。さらに特別条項があれば、時間外労働は年720時間以内、時間外労働と休日労働の合計は月100時間未満、2~6カ月平均80時間以内まで認められます。しかも月45時間を超えられるのは年6カ月までです。
これ、別に「働くな」と言ってるんじゃないんです。
“死ぬな”と言ってるだけなんですよ。 
https://www.mhlw.go.jp/content/000463185.pdf
この程度の防波堤すら「邪魔だ」と言い始めるのは、正直かなり怖い。
というか、どこまで行ったら満足なんですか。
月45時間でも足りない、年720時間でも窮屈、月100時間未満でも硬直的――って、
それもう働き方改革じゃなくて、働かせ方改革なんよ。


問題は「労基署が厳しすぎること」じゃない

「違法残業が普通に存在してること」だ

ここ、感情論じゃなくて数字でいきます。
厚生労働省が公表した令和6年度の監督指導結果によると、長時間労働が疑われる26,512事業場に監督指導を行った結果、11,230事業場(42.4%)で違法な時間外労働が確認されています。さらにそのうち、実際に月80時間超の時間外・休日労働が認められた事業場は5,464月100時間超3,191です。
つまり現実は、「労基署が細かいことをうるさく言いすぎている」のではなく、
かなりの数の職場で、普通にアウトなことが行われているんです。
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_59983.html
これで「監督の運用を見直そう」は、例えるなら、
飲酒運転がゴロゴロ見つかってるのに
「いや、検問のやり方が厳しすぎるのでは?」
って言ってるようなもんです。
違うだろ。
先に怒る相手は検問じゃなくて飲酒運転だろ。
そこを見失うの、政治のバグというより、倫理の初期設定が壊れてるんですよ。


長時間労働は“気合い”ではなく“健康リスク”です

昭和の根性論ではなく、普通に医学の話です

長時間労働の何が問題か。
それは単に「しんどい」からではありません。
人が壊れるからです。
WHOとILOの共同研究では、週55時間以上働く人は、週35~40時間の人に比べて脳卒中リスクが35%高く、虚血性心疾患による死亡リスクが17%高いとされています。さらに2016年には、長時間労働に起因する脳卒中と心疾患で世界で74万5,000人が死亡したと推計されています。
これ、気分の問題じゃないんですよ。
「最近ちょっと疲れてるかも~」という可愛い話ではなく、
そのまま命に行くという話です。
 https://www.who.int/news/item/17-05-2021-long-working-hours-increasing-deaths-from-heart-disease-and-stroke-who-ilo


残業時間が長いほど、疲労の蓄積度とストレスが高いと判定される人の割合が高くなることを示した厚労省白書の図。 
https://www.mhlw.go.jp/content/11201000/001336530.pdf
厚労省の過労死等防止対策白書でも、残業時間が長いほど「疲労の蓄積度」と「ストレス」が高いと判定される人の割合が高いとはっきり書かれています。
だから「長時間労働には問題もあるが、一概には言えない」みたいな、評論家が好みそうなぬるい中間コメントをここで差し込む必要はないんです。
長く働かせたら、壊れやすくなる。以上。

https://www.mhlw.go.jp/content/11201000/001336530.pdf
ここでまだ「でも人手不足だから」で押し切ろうとする人がいるんですけど、
その理屈、雑に訳すとこうです。
「人手不足だから、一人を二人分使い潰そう」
いや怖い怖い怖い。
ホラー映画でも、もう少し導入に段階あるぞ。


しかも壊れてるのは身体だけじゃない

心までやられてる

令和6年度の「過労死等の労災補償状況」を見ると、脳・心臓疾患の請求件数は1,030件、支給決定件数は241件。そして精神障害に関しては、請求件数が3,780件、支給決定件数が1,055件です。
つまり、メンタルの不調が「本人の気の持ちよう」なんかではなく、
業務との関係で公的に認定されるレベルで大量発生しているわけです。 Source
ここまで来てもなお、「もっと柔軟に残業できるように」って言えるの、すごいですよ。
何がすごいって、現実を見てなおズレ続ける胆力がすごい。
普通は途中で「あれ、これまずいかも」ってなるんです。
でもならない。
政治家というより、警告ランプをガムテープで隠して運転するタイプです。


労働組合も弱っている

つまり、労働者は“自己防衛しにくい状態”に置かれている

「嫌なら辞めれば?」みたいなことを軽く言う人もいます。
でも、そんな簡単な話じゃない。
なぜなら日本では、労働者が集団で交渉して自分を守る力そのものが弱っているからです。
2025年の厚労省「労働組合基礎調査」では、労働組合員数は992万7千人、推定組織率は16.0%。前年より0.1ポイント低下し過去最低でした。長期で見れば、推定組織率は**1949年の55.8%**をピークに下がり続けています。
要するに今の日本は、
長時間労働の圧力はある、でも現場で集団的に抵抗する力は弱い
という、労働者にとってかなり危ない状態なんです。 https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/roushi/kiso/25/dl/houdou.pdf 
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/roushi/kiso/25/dl/hyo01.xlsx
この状況で規制緩和って、何なんですかね。
たとえるなら、
ライフジャケットを減らしてから「各自の泳ぐ力を信じたい」って言ってるようなもんです。
信じるな。着せろ。
まず守れ。
話はそれからだ。


「また電車止まってる」って怒る前に

“なぜ社会全体がこんなに余裕を失ってるのか”を考えろ

ここ、個人的にもすごく大事なところです。
うちの父もそうなんですが、
こういう話になると「また電車止まってるんだよ」「ほんと最近多いんだよ」って言うんですよ。
もちろん、電車が止まる理由は一つじゃない。
急病人対応もある。緊急停止ボタンもある。荷物の挟まりもある。
それはわかる。
でも、こっちが言いたいのはそこだけじゃないんです。
みんな疲れすぎなんじゃないか?
社会全体が余裕を失ってるんじゃないか?
って視点が、あまりにも軽視されすぎてる。
何かトラブルが起きたとき、
「迷惑だ」で終わる社会と、
「その背景に何があるんだろう」と考える社会では、
人間の扱いがまるで違います。
今の日本は後者が弱い。
すぐ自己責任、すぐ根性論、すぐ「昔はもっと働いた」。
はいはい、出ました。
昭和の亡霊・“俺たちはそれでやってきた”おじさんです。
でもその「やってきた」の結果が、過労死であり、心の病であり、家庭の崩壊であり、若者の希望喪失なんじゃないのか。
そこを総括しないまま武勇伝だけ語られても、
こっちは「それ成功体験じゃなくて、未処理の集団トラウマでは?」としか思えません。


私は基本的に規制緩和に反対です

なぜなら、この国の“緩和”はだいたい弱い側から壊れるから

ここははっきり言います。
私は基本的に、いかなる規制緩和にもかなり懐疑的です。
なぜか。
この国で「規制緩和」と言うと、たいてい
強い側がさらに得し、弱い側の安全網が薄くなる
という形で出てくるからです。
「柔軟化」
「見直し」
「現実対応」
「成長戦略」
言い方は毎回ちょっとオシャレです。
でも中身を開けると、だいたい
“守るためのルールを外して、使う側の都合を通しやすくする”
だったりする。
この手の言葉、最近はもう脳内で自動変換されます。
「柔軟化」→現場が泣くやつ
「効率化」→人員減らすやつ
「見直し」→守りを薄くするやつ
「挑戦」→失敗しても責任取らないやつ
便利ですよ。政治日本語辞典として出版したいくらいです。


本当に必要なのは、もっと働ける社会じゃない

もっと休めるのに食っていける社会だ

私が本当に思うのはこれです。
1日6時間、週4日でも食っていける社会を作れよ、と。
働ける人間を限界まで使って、壊れたら「代わりはいる」、心を病んだら「ケアします」、辞めたら「人手不足です」――
いや、
最初から壊れないように設計しろよ。
そこを避けて、最後だけ福祉っぽい顔するの、ずるいんですよ。
労働で搾取されて、物みたいに扱われて、もう働くこと自体に希望を持てなくなってる人、山ほどいるでしょう。
統計の数字に出る前に、生活感覚の中でもう十分見えてる。
「頑張れば報われる」じゃなくて、
「頑張るほど削られる」
になってる人、いっぱいいるじゃないですか。
それを見てなお、政治がやることが
“残業を減らせと言いすぎるな”
なのだとしたら、
もう笑うしかない。
いや笑えないんだけど、笑わないと血圧が危ない。


結論

労基署が邪魔なんじゃない

“人間を使い潰してでも回ればいい”という発想が邪魔なんだ

労働基準監督署の指導を「一律すぎる」と言う前に、
違法残業がどれだけあるのか見ろ。
過労死や精神障害の認定がどれだけ積み上がってるか見ろ。
長時間労働で健康リスクがどれだけ上がるか見ろ。
組合の組織率がどれだけ下がってるか見ろ。
全部、数字で出てます。
もう十分すぎるほど出てます。
それでもなお「規制緩和だ」と言うなら、
それは事情を知らないんじゃない。
知っててやるのか、という話になる。
私は、こういう流れに断固反対です。
長時間労働を抑えるルールは、景気の敵じゃない。
成長の足かせでもない。
人間を人間として扱うための最低条件です。
これを削る政治に対しては、
こちらも遠慮なく言わせてもらいます。
ふざけるな。
こっちは“効率”のために生きてるんじゃない。
ちゃんと生きるために働いてるんだ。


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